コラム 2026年3月15日
肘関節拘縮 — 完全に伸びないとき
金孝燮
代表院長
肘が伸びも曲がりもしない状態
肘関節拘縮(elbow contracture)は関節の運動範囲(ROM)が正常範囲に達しない状態を指します。正常な肘は完全伸展(0度)から完全屈曲(約140~150度)まで動きますが、拘縮が起こるとこの範囲が著しく狭まります。日常生活で機能的に必要な範囲は屈曲30~130度であり、この範囲すら確保されないと食事・洗顔・髪をとかすといった基本動作が困難になります。
関節拘縮の原因
肘の拘縮は大部分が外傷後に発生します。骨折、脱臼、手術後の長期固定が最も多い原因で、慢性関節炎や熱傷後にも生じます。
- 関節包拘縮:関節を包む関節包が厚くなり線維化して関節の動きを制限します。
- 筋・腱の短縮:周辺筋と腱が短くなり能動的・受動的運動範囲がともに減少します。
- 異所性骨化(heterotopic ossification):外傷後に筋肉内に異常な骨が形成され、物理的に関節運動を妨げます。
韓方治療:推拿と刀鍼の相乗効果
推拿療法(関節可動術)で関節包の可動範囲を漸進的に広げ、刀鍼治療で癒着した軟部組織と線維化組織を解消します。両治療を併行することで、関節拘縮の二大原因である関節包の制限と軟部組織癒着を同時に解決できます。
- 推拿関節可動術:等級別関節モビリゼーション(Grade I~IV mobilization)で関節包を伸張
- 刀鍼治療:癒着・線維化組織を精密に解消して組織の滑走(gliding)を回復
- 鍼・灸:周辺筋の緊張緩和と血行促進で治療効果を最大化
- 運動療法:治療後に確保したROMを維持・拡張する能動運動の併行
継続的な治療がカギ
関節拘縮は1~2回の治療で解決しません。週2~3回の治療を数週間続け、段階的にROMを広げる必要があります。治療の合間に家庭での運動を真面目に行うことが最終的な結果を左右します。