コラム 2025年6月10日
肘の鍼・薬鍼治療の原理
金孝燮
代表院長
肘の痛みに鍼治療が効果的な理由
肘の腱症に対する鍼治療の効果は、多数の臨床研究で立証されています。鍼の刺激は単に痛みを遮断するだけでなく、局所の微小環境を変化させて組織の回復を促進する複合的な作用をもたらします。
鍼治療の作用機序
鍼が組織に刺入されると微細な物理的刺激が発生し、それに反応して様々な生理的変化が起こります。
- 血流促進:鍼刺激の周囲で血管が拡張して血流量が増加します。腱付着部はもともと血流が乏しい部位なので、この効果は特に重要です。
- 痛み信号の遮断:鍼刺激はA-β神経線維を活性化し、痛みを伝えるC線維信号を抑制します(ゲートコントロール理論)。また脳でエンドルフィン分泌を促します。
- 筋緊張の緩和:トリガーポイントへの鍼刺激は局所単収縮反応(LTR)を誘発し、筋硬結を解消します。
- 抗炎症作用:鍼刺激は迷走神経を介して全身的な抗炎症反応(cholinergic anti-inflammatory pathway)を活性化します。
薬鍼:鍼と薬の融合
薬鍼治療は韓方薬から抽出・精製した薬液を経穴や病変部位に直接注入する方法です。鍼の物理的刺激と薬剤の薬理作用が同時に起こるため相乗効果が期待できます。肘の腱症には消炎・活血作用のある薬剤の組み合わせが主に使用されます。
蜂鍼:蜂毒の抗炎症作用
蜂鍼(bee venom therapy)はミツバチの毒嚢から抽出した蜂毒を精製し経穴に注入する治療です。蜂毒の主成分であるメリチン(melittin)は強力な抗炎症作用を持ち、特に腱症のような慢性筋骨格系疾患での効果が報告されています。
- メリチン:PLA2阻害による抗炎症作用
- アパミン:神経保護および鎮痛効果
- 注意事項:蜂毒アレルギー検査を必ず先行する必要があります。
治療サイクルと経過
急性期には週2~3回の鍼・薬鍼治療を始め、症状改善に応じて週1回に減らします。通常4~8週の治療後に有意な改善を経験し、慢性化した場合は12週以上かかることがあります。