コラム 2025年7月7日
肘・手首・肩 — 上肢の痛みをつなぐ環
金孝燮
代表院長
肘は単独ではない — 運動連鎖の概念
上肢(upper extremity)は肩・肘・手首・手につながるひとつの運動連鎖(kinetic chain)を形成します。各関節は独立して作動するのではなく、互いに影響し合い協調的に動きます。肘はこの連鎖の中間ハブに位置するため、肩や手首の問題が肘の痛みとして現れたり、逆に肘の問題が他の関節に波及したりすることがあります。
肩が弱いと肘が苦労する
回旋筋腱板の弱化や肩甲骨の不安定性があると、投げる・持ち上げるなどの動作で肩が担うべき負荷が肘に転嫁されます。テニス選手のサーブ動作を例にすれば、肩の内旋筋力が不足するとき、肘の内側に過度の外反ストレスがかかります。
- 肩甲骨安定化の不足:肩のベース(base)の不安定 → 肘への代償的過負荷
- 胸椎の可動性制限:上部体幹の回旋制限 → 腕の動作範囲で代償
- 手首の不安定性:手首関節の過度な動き → 前腕筋の過活性化 → 肘の腱付着部へのストレス
肘単独治療の限界
肘の痛みの原因が他の関節にある場合、肘だけ治療しても再発を防げません。韓医学でも「痛則不通(つうそくふつう)」の原理に従い、気血の疎通が滞った根本原因を探すべきと考えます。経絡(経絡)体系で肘を通る手陽明大腸経・手太陽小腸経・手少陽三焦経はいずれも肩と手首までつながるため、経絡に沿って全体的な疎通を図ることが効果的です。
全体的視点の韓方治療
- 肩・手首の同時評価:肘痛患者には肩のROMおよび回旋筋腱板機能検査、手首の安定性検査を併せて行います。
- 推拿療法:肩甲帯・肘・手首の関節可動性をともに回復させます。
- 経絡治療:肘の局所だけでなく、関連経絡に沿って遠位取穴を行い上肢全体の気血循環を改善します。
- 筋力バランス:肩-肘-手首の筋力不均衡を是正する運動処方を併用します。
肘の痛みが繰り返されるなら、肘だけを見るのではなく上肢全体を診る視点が必要です。